穀物遺産“古代米を育てる”  2000/11/23


  さて、前号では愛知県の渥美半島で有機野菜で生産している農家において古代米 (黒米)の田植えにチャレンジしたことを紹介させていただいた。

  仲間達で束ねた黒米の苗をぬかるむ田んぼにさし込んでいったのは五月。腰も脚も腕もパンパンになった。それはそう!機会を使わずに、一切を手作業でやったのだ。
  東京の便利な生活に慣れ、運動不足を痛感する二日間であった。人がまだ人として充分な知識も道具も持っていなかったはるか昔は、きっとこうやって農業に向かい合っていたに違いない。ふと夕暮れに広い田んぼをみると、青々と元気な苗が数十メートルに広がり爽快な風景が広がっていた。

  月日はめぐって秋!さあ、稲刈りの季節に私達は再び渥美半島の「渥美どろんこ村」へ向かった。田んぼを見た瞬間黙り込んだ。びっくりする程、青々と古代米(黒米)の稲はそびえ立っているのだ。白米の1.5倍は背も高く、あちらこちらに首をもたげ、無造作に広がっていた。一面、緑色のじゅうたんの様に。「原初の風景」そんな言葉が頭をよぎる。そして次の瞬間、私達はこれを手で刈っていくのだろうか冷や汗が  背中をつたう。膨大な広さに感じた。黒米というか古代米を田植えから経験するのだから、やはり稲刈りも手でやろうが合い言葉ではじまった。よし、鎌で刈って少しずつ横にたおしていこう。ということになった。黒米の細い葉は、細かいガラスの様に私達の腕や、顔にキズをつけていく。

  最近田舎暮しをする人が増えている。それは人が自然と緑を求める魂の希求なのか、と考える。そしてしぜんに農業に携わっていく。ハーブや野菜やお米を作る人も少なくはない。実際に私も都会から田舎に生活の場移し、人生を満喫している人たちを何人か知っている。それに憧れる気持ちもある。

 しかし、田んぼにしっかりと対面し、土、草、稲、野菜を育てていくということは本当に並み大抵のことではないと実感した。少しずつ慣れてきて横だおしにした稲をわらで縛り、今度はほし竿にかけていく。こうして二日間丸々と黒米の稲刈りに費やした。爽やかな気分だった。が、まだこれで終わりではない。黒米は長米なので、脱殼機にかけられない。今度は一粒づつ手で脱穀し、ビンの中に入れ、上から木でつついてもみ殻をはずすのだ。気が遠くなる様な作業。こうして中から黒光りした紫色の古代米(黒米)が顔を出した時は心の底から嬉しかった。

 黒米の優れた点は、ポリフェノールがたっぷりと含まれていること。血液をサラサラにする作用がある。お米を炊く時にひとにぎり混ぜるだけでうっすらと赤いごはんが出来上がる。栄養価も高い。

 今回の田植え〜稲刈りのメンバーの中に10月に結婚式を挙げたカップルがいた。
 二人は列席して下さった方々にこの古代米(黒米)を配った。二人が手作業で大切に育てた(途中は農家の人が育ててくれた!?)黒米が白米に混ぜてうっすらと赤いご飯 になるという。これは昔の人たちが赤飯の代わりにお祝い事に利用したといういわれからもとても似合っている。
  黒米もそうであるが最近は健康を考えた食というものが見直されている。玄米もそうである。現代の食生活で不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含む。中でも胚芽米には、アミノ酸の一種である「ギャバ」が含まれ高血圧を改善したり、中性脂肪を下げる効果まで確認されている。こうした玄米を発芽状態にした「発芽玄米」も健康により気を使う人を中心に人気があるようだ。

  今回ほんの一部ではあるが、古代米(黒米)を育てるにあたって一連の作業を通して日頃食べているものがどう作られているか自分の目で確認できた楽しさと同時にその栄養などについても、又有機農業の大切さ大変さも学習することができた。健康ということをテーマに植物、ハーブ、そして食ということをより身近に考える経験であっ た。写真はその時の様子である。